2011年11月25日金曜日

サツマイモの花と種子について

前回、自宅で実生サツマイモを収穫したことを書いたので、それに関連した記事を書こうと思います。

サツマイモはヒルガオ科の植物で、アサガオに似た美しい花を咲かせます。沖縄では秋から冬によく見られるそうです(沖縄土産で有名な「紅いもタルト」のパッケージにのっている花がそれです)。
しかし、本土ではめったに花が見られません。これは、サツマイモが「短日植物」であることによります。
サツマイモに限らず多くの植物では、夜(暗期)の継続時間によって花芽を形成する物質(ホルモン)が作られます。このうち、アサガオやコスモスなど夏から秋に開花する植物は、ある一定時間以上の暗期(限界暗期といいます)が続くとホルモンが作られ、花芽が形成されます。こうような性質を持つ植物を「短日植物」といいます。本来ならば「長夜植物」と呼ばれるべきですが、初めのうちは暗期でなく明期(昼)の長さが重要と考えられていたため、「短日植物」と呼ばれるようになったようです。サツマイモもこの仲間です。逆に、暗期がある一定時間以下になると花芽が形成されるものを「長日植物」と呼びます。

サツマイモの場合、アサガオに比べて短日条件が長く続かないと花芽が形成されない「鈍感な短日植物」であり、本土では開花条件に達する前に冬を迎えてしまうようです。(アサガオの生理学 アサガオへの接ぎ木によるサツマイモの花成http://www.sc.niigata-u.ac.jp/biologyindex/wada/p13/p13-2-1.html参考)また、種子を作るには別の品種の花粉で受精する必要がある「自家不和合性」という性質も持つため、複数品種が隣あって植わっている畑でない限り、花が咲いても種子が形成されることはまずありません。

石垣島でみたキダチアサガオ 2011年10月
 サツマイモの新しい品種を作るにあたっては、異なる品種どうしを交配させ、種子を形成させる必要があります。種イモからは、種イモと同じ品種のもの、つまりクローンしかできないためです。
花がめったに咲かない本土において、現在品種改良を行うために用いられているのが「キダチアサガオ高接ぎ法」というものです。(サツマイモ辞典 (財)いも類振興会 編・発行、全国農村教育協会 発売 より)
キダチアサガオはサツマイモと同じヒルガオ科サツマイモ属の植物のため、接ぎ木が可能です。そして、キダチアサガオはサツマイモよりも敏感な短日植物であるために、本土でも開花します。キダチアサガオで作られた花芽形成のホルモンが、サツマイモにも作用して花が形成され、それをもとに交配を行うという仕組みです。

「サツマイモ辞典」によれば、毎年計9万粒以上のサツマイモ種子が品種改良のため採種、そして選抜・育種が行われているそうです。僕は趣味で3粒を育てましたが、実際の品種改良は実用性のある品種を探すための非常に大変な作業だということがわかります。

長々と堅苦しい文を失礼しました。

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2011年11月23日水曜日

実生サツマイモの収穫。

今年2月に訪れた西表島の畑でサツマイモの種子を手に入れ、それをベランダで育てていました。
サツマイモは、通常種イモをもとに栽培するものですが、条件によっては花が咲き、種子をつけることがあり、それから育てることもできます。
(発芽の様子は別ブログで書いているのでよければ見てください。農工やさい塾ブログ


今日、そのサツマイモ3株を収穫しました。つまり、3個の種子から育った実生株ということです。

 栄養条件によるのかもしれませんが、種から育った1年目は、一株一つのイモが形成されるようです。収穫した3株のうち1つは白で、2つは普通の赤でした。中身は全て白でした。確か、全て同じ株から取れた種子のはずなのですが・・・。サツマイモは他品種の花粉がないと受精しないと聞いたことがあるので、白の株だけ白いイモをつける品種の花粉がついたのかもしれません。


次に、葉っぱの変異を見てみます。同じ赤いイモをつけた株でも葉の形状に大きな違いが見られました。

普段見られるサツマイモは、種イモから増やされたクローン、つまり品種が同じなら同じ遺伝形質を持っています。今回できたイモは2つの品種(不明)がかけ合わさってできたもので、遺伝形質は既存のものと全く異なる、つまりこの世に1つしかない品種と言えるでしょう。

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